パートタイマー・60歳以降の雇用保険・社会保険加入について

 非正規従業員化が進む今日、パートタイマー・高齢者の雇用保険・社会保険加入の是非が問われる時代が到来しています。
 
 雇用保険については、退職者から「離職票を下さい」と言われたら、雇用保険加入者としての要件を満たしている限り、会社は加入させる義務がありますので、過去に遡及して雇用保険料を修正申告し、離職票を発行する義務が生じます。パートだから、加入させる義務がないと思っていたら・・・「知らない会社の・・そう、あなたの会社が悪いと」、あっさり片付けられてしまうだけです。「知らなかったでは済まされない」ということなのです。
 
 また、社会保険については、パートタイマー自体が加入することをためらうケースが多く、不満は出ないでしょう。ただ、就業形態が社会保険加入要件を満たす限り、賃金(給料)の支給額に関係なく、加入義務が生じます。加入手続は本人の意思は全く関係なく、会社責任で行うものとされています。中小企業の経営者の多くは、このことを誤解しています。
 
 
未加入者がある場合は、気をつけましょう。
それは、こんなことがあった場合です。
 
 
  
  【雇用保険の場合】
 円満退社でない場合、雇用保険料が毎月の給与明細から控除されていないにもかかわらず、図々しくも「離職票」を要求してきたときです。
これは正直言って困ります。こういう会社の場合は、雇用契約書を交付していなかったり、自動更新だと言って次年度以降、雇用契約書を取り交わしていないケースがよく見受けられます。
 
 こうなりますと、解雇という問題にまで発展します。退職者は、最初は「離職票」の件でハローワークに行きますが、そこでの対応は、まず労働基準監督署に行ってみたら?なんて有難くないアドバイスをしてしまうのです。未加入者一人の問題で社長が解雇問題に振り回されテンヤワンヤとなる事がよくありますので、加入要件をしっかりと確認し、加入させるべきパート・高齢者は加入させ、雇用契約書も毎年文書にて契約期間を定めて締結しておきましょう。
 ちなみに、パート1人の月間賃金が8.5万円とした場合、建設業を除く一般の会社の雇用保険料の会社負担は、わずか年間11,730円です。月間ではなく「年間」です。

  【社会保険の場合】
 パートタイマーは、原則、ご主人の扶養の範囲内で働く人が多いものです。「私はパートだから〜ちょっと・・・」、会社も「そうだね!あなたは、毎月の賃金が8.5万円だからね〜」・・・って妙に相互に納得し、加入しない、加入させないというのが どうやら現状のようです。
 
 また、60歳以降で年金をもらって、加入要件を満たしているにもかかわらず、未加入で働いている高齢者は特に要注意です。年金月額と現在の賃金(標準報酬月額)が28万円を超えると、在職老齢年金となり、支給制限や支給停止になる場合があるからです。ここで間違えやすいのは、現在の賃金というのは、その月の賃金(標準報酬月額)+その月以前1年間の賞与を12ヶ月で割ったものの合計額だということです。
 
 たとえば、定年間近の59歳のときに賞与が年間120万円支給されたとし、60歳から支給される報酬比例部分の年金月額が10万円であったとします。60歳からの賃金が大幅にダウンして20万円になったらどうでしょうか? 60歳〜61歳までの1年間だけを仮定してお話しします。
 
 (例)
 10万円+20万円+(120万÷12ヶ月)=40万円
 40万円−28万円=12万円 12万円×2分の1=6万円
※ つまり、10万円の年金のうち、6万円が支給停止となり、4万円の年金しかもらえません。
※ 前年度の年間賞与を引きずって計算されるのがポイントです。ですから60歳以降も再雇用する場合には59歳の賞与支給も検討課題です。
 
 このように、高齢者を社会保険に加入させると年金がカットされる場合が多く見受けられます。
就労形態(労働時間・労働日数)と高齢者本人の年金受給額の確認をし、社会保険に堂々と加入しない要件を整えてあげる対応も必要でしょう。
 
 また、気をつけたい もう一つの点があります。 
 社会保険事務所の総合調査や、鬼よりコワイ「会計検査院」の調査があった場合です。加入要件に該当しながら未加入の場合は、遡及して加入させられます。会計検査院の遡及は2年間まで問答無用で遡って社会保険料を徴収されます。(まったくヒドイ話です)その時、会社は、未加入者から、2年分の本人負担の社会保険料を負担していただけるでしょうか?(まず無理でしょう・・・)
 
 まして、高齢者が加入要件を満たす働き方をしている場合で、社会保険未加入の場合、過去に遡及して、既にフトコロ奥深く入ってしまった高齢者の年金の返還という厳しい残酷な事態が待っています。60歳以降の高齢者からは、「なぜ、会社がその仕組みを教えてくれなかったのか」、「それであれば、働く日数を少なくしたかった」とか、もう、会社は高齢者から、吊るし上げの状態になるでしょう。
 無論、会社が、その分も含めて、支払う羽目になってしまうかもしれません。何も調査がない場合は合法的でなくても、無事に済むでしょう。いや、多くの会社がそれで事なきを得ているのでしょう。しかし、潜在的リスクは常にあり、それが表面化したとき、こんなハズではなかったと後悔することも多くなってきているような気がしています。これからは、会社は「転ばぬ先の杖」的な経営をしていくことが必要になるでしょう。

 
もう一度、雇用・社会保険の加入要件を確認しておきましょう!

【雇用保険加入要件】
@週の所定労働時間が20時間以上であること
A1年以上の雇用が見込まれていること

【社会保険加入要件】
@1日または週の所定労働時間が、正規従業員の所定労働時間の4分の3以上
かつ
A1ヶ月の所定労働日数が正規従業員の所定労働日数の4分の3以上

 ※ つまり、社会保険加入要件からはずすためには、上記のうち1つの要件を満たさなくすることです。

 ただし、今後、週労働時間が20時間以上のパートを強制加入させる時代がそこまで来ていますので、法改正情報には、敏感になっておくことが必要です。
 その時点になれば、また、加入要件を満たさなくする秘策で対応するしかないでしょう・・・

                     TOPページへ戻る