従業員を解雇する場合、解雇予告手当を払えば問題ないですか?

  労働基準法上、解雇する場合の手続きとして使用者に義務付けられているのは、解雇する従業員に少なくとも30日前までに予告することです。予告をせずに即時解雇する場合は、平均賃金の30日分以上の解雇予告手当の支払いが必要となります(労働基準法20条)。
 この解雇予告の日数は、平均賃金を支払った日数分だけ短縮できることになっています。例えば、解雇しようとする日まで20日しかなく、解雇予告期間が30日に満たない場合は、これに不足する日数分、つまり10日分の平均賃金を支払わなければならないことになります。

 しかし、この解雇予告手当を支払うことは、解雇手続のあくまで一環であり、従業員を解雇する場合は、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と認められる場合でなければ、解雇権の濫用として無効となります(労働契約法16条)ので、解雇予告手当を支払ったからという理由で、解雇は正当化されたことにはなりません。

 解雇は、従業員にとって、その生活の基盤が失われることで大きな影響を受けることになります。
したがって、実際に裁判で解雇の効力が争われるケースでは、個別具体的な諸事情を総合的に考慮した上で、その解雇の合理性・相当性が厳格に判断されるのが通常です。

  就業規則に定めていない解雇事由で従業員を解雇できるかどうかについては、以下のとおりです。
普通解雇のように例示列挙説(就業規則に記載漏れがあって直接該当しない事由であっても解雇できる)と、懲戒解雇のように限定列挙説(就業規則に記載された解雇事由以外の解雇はできない・・・ただし、その他前各号に準ずる事由等の包括規定も有効)というように解雇の種類別に考え方が分かれています。
したがって、裁判で解雇の有効・無効が争われる場合に、その解雇の理由が就業規則に記載された解雇事由に該当するかどうかという点は、解雇の有効性を判断するうえでの1つの大きなポイントです。
 就業規則は会社を縛るものではなく、トラブル回避のために強力な武器ともなり得るのです。

民法では、会社は、自由に解雇ができると思うのですが…

 解雇は、会社から従業員に対する解約の申し入れです。

民法627条では、

1項 「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。」

2項 「期間によって報酬を定めた場合には、解約の申入れは、次期以後についてすることができる。ただし、その解約の申入れは、当期の前半にしなければならない」と定められています。

 つまり、民法では、解雇はいつでも申し入れをすることができるとされています。(解雇自由の原則)
しかし、この原則を貫くと、弱者の立場にある労働者が困ることになります。

したがって、労働者救済策として労働基準法、労働契約法、判例によって修正が加えられています。

民法は一般法であり、労働基準法は特別法という相反関係にあります。

特別法は一般法に優先し、一般法と特別法とで法が異なった規律を定めている場合、特別法の適用を受ける事象は一般法の規律が排除され、特別法の規律が適用されます。

前述の解雇についても、その考えから、民法の考えではなく、労働基準法や労働契約法等によって規制されることになります。

 したがって、下記のとおりとなっているのです。

1.業務上の災害または産前産後の休業中及びその後30日間の解雇は禁止(労働基準法19条)

2.解雇は、30日前の予告または30日分の解雇予告手当が必要(労働基準法20条)

  ※手続的にはこれで構いませんが、解雇の正当性とは全く別問題であることに留意して下さい。
3.客観的に合理的な理由と社会通念上相当がない限り、解雇権を濫用したものとして、解雇は無効(労働契約法16条)

4.有期労働契約における期間途中の解雇は「やむを得ない事由」がないとできません。(労働契約法17条1項)

  ※これは、解雇権濫用法理の基準よりも厳しくなっており、よほどのことがない限り「やむを得ない事由」とは判断されません。したがって、有期労働者(パート等の期間労働者)の雇用契約期間については、期間管理が大変にはなりますが、6ヶ月契約にすることも重要なことです。

有期契約の従業員(パートタイマー、期間工等)を契約期間中に解雇することは認められますか?

 解雇は可能ですが、ただし、条件付です。やむを得ない事由がある場合のみです。

根拠は下記の労働契約法17条1項にあります。
17条1項 「使用者は、期間の定めのある労働契約について、やむを得ない事由ある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない」

 

 そこで問題となるのは、「やむを得ない事由」とは、どんな場合を指すのかということです。
一般的には、何せ期間契約なのですから、そこまでは雇用を保障しなさいというメッセージなんだと考えられ、通常の正社員のように期間の定めのない労働契約における解雇に必要とされる「客観的に合理的で、社会通念上相当と認められる事由」よりも、厳格に解するべきとされています。 

 たとえば、会社が甘い事業環境分析により経営見通しを誤って事業運営が苦しくなったり、また不況により、会社の一部門が休業したり、廃止した場合でも、ただ、その理由だけをもって、有期契約の期間途中で当該労働者を当然解雇することは許されないのです。

 なお、期間の定めがある雇用契約をやむを得ない事由があって、雇用契約を解除する場合には、「その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う」とされています。(民法628条)
すなわち、使用者の過失により生じたものとされてしまえば、会社側は有期契約従業員に対して損害賠償義務を負うことになります。

 この場合の賠償限度額は雇用契約で定めた期間満了までの賃金相当額を基準として交渉することになります。

試用期間中の解雇は自由ですか?

 会社にとって、適格性判定ができないまま、いきなり正社員として雇用するのはあまりにリスクが高すぎます。したがって、入社後一定期間に当該労働者の人物・能力を評価して本採用の可否を決定します。その期間のことを試用期間といいます。また、試用期間中の当該労働者との契約は、解約権留保付労働契約とされています。
 たとえ、解約権留保付労働契約とはいえ、その試用期間中に解雇することは、「客観的に合理的な理由」がない限り、その解雇は無効になります。

ただ、試用期間中も内定と同じく、会社が留保付解約権を持っていますので、正社員としての適格性がないと判断した場合については、解約権を行使することが出来ます。これは正社員に対する解雇規制が厳しいため、せめて試用期間中には、普通解雇とは別の解約権を認めているのです。
試用期間中の解雇の有効性の判断は、正社員の解雇と比べて、若干緩やかになっています。

しかし、会社が、採用決定後の調査結果、または試用期間中の勤務状態等により、当初知ることができず、また知ることが期待できないような事実を知るに至った場合に、

そのような事実に照らし、当該労働者を引き続き雇用していくことが適当でないと判断することが、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当として認められる場合にのみ、試用期間中の解約権行使が許されるということになります。

 試用期間中の解雇は、労働者側も仕方ないと諦めるケースが多いものですが、実務上は、勤怠不良など客観的な証拠を揃えたうえで、解雇する前に退職勧奨して退職してもらうか、お互いによく話し合い、合意して退職届を提出させておくことが、解雇をめぐる労使トラブルを発生させないための一つのポイントです。

勤怠不良の社員を解雇する際に気をつけておくことは?

 勤怠不良の社員とは、遅刻が多かったり、欠勤も連続ではないものの月に数回あるような社員のことです。
この勤怠不良の社員を解雇したい場合、ポイントは、勤怠不良の状況が、解雇されるのもやむを得ないと思える程度まで不良か?ということです。その不良度合いに応じて解雇権の濫用の有無が判断されてしまうからです。

 したがって、正当な権利として解雇権を行使するために、解雇前に、その不良度合いを判断しておくことが必要です。

具体的には、@欠勤回数、Aその欠勤は連続か、B無届か事前予告か、C欠勤理由の有無(たとえば病気)、D病気なら、その理由を裏付けるもの(病院の診療レシート、診断書)、Eその欠勤によって会社の業務に支障が生じたか、F支障が生じた場合、その程度 などが挙げられます。(早退、遅刻についても同様)

 また、その欠勤や遅刻、早退が続くと解雇という重大な不利益を受けることになるということを、事前に当該労働者に伝えておくことです。解雇という決断をする前に、必ず、教育や警告が必要となります。
 解雇するに至る勤怠不良の事実は、解雇した側、すなわち、会社が主張、立証しなければなりません。

口頭で注意するケースが非常に多いですが、会社を守るためには、文書でしておくべきです。
遅刻(理由がない遅刻)が多発している場合は、始末書もとるべきです。しかも、一事案(一遅刻)につき、一枚です。 

また、欠勤日数、遅刻の時間数、日数、それぞれが頻繁かどうかについては、会社としては、タイムカード等により労働日数、労働時間を管理しているので、証拠は揃います。
欠勤・遅刻の事前届出の有無、理由については、業務日誌に連絡を受けた者がメモをしておく習慣があれば有力な証拠となります。病気欠勤の場合は、欠勤日数が多くなるときは、医師の診断書を提出させることで、それが有力な証拠となります。
 では、欠勤や遅刻が多いとは、どの程度のことをいうのかということです。
一般的に、欠勤では「連続1ヶ月」、遅刻でいえば「直近3ヶ月で半分が遅刻」・・・といった程度です。

 しかし、そんな程度まで、会社は容認できるものではありません。
その場合は、解雇されてもやむを得ない程度の不良(欠勤ないし遅刻)で、会社の業務に支障が生じたかが論点になります。

 上記の事実関係の主張・立証ができるかどうかによって、解雇されてもやむを得ない程度の不良度合いを判断されて、解雇権の行使が正当か、それとも濫用だったかが審判されます。

 ただ、留意したいのは、労働時間または労働日の出勤に裁量のある労働者には、この勤怠不良をもって解雇することは難しいと思われます。なぜなら、そのような社員は裁量労働制だったり、幹部社員だったりするわけで、単純な遅刻、欠勤で解雇することはできないからです。それをすることは、会社自らが、労働基準法41条2号の管理監督者の位置づけを否定することになってしまいます。
 むしろ、このような社員には、遅刻、欠勤の結果、成果が出ていない(高度専門職)、あるいは、部下・部署の管理ができていない(幹部社員)ことが退職させるときのポイントとなります。これはむしろ能力が低い社員として認識するべきでしょう。

能力の低い社員を解雇させるときの注意点は?

 能力の低い社員が、新卒者か、中途採用者かで、会社は異なる対応をすべきです。

 新卒者の場合は、新しく社会に初めて入ってきた人たちであり、これから教育し、訓練して育成されていく人材です。このような人たちに短期間で労働能力の欠如をもって解雇することは事実上困難です。ただ、読み書きや計算、基本的な電話応対ができないといった基礎的能力がない場合は可能と考えます。


 一方、即戦力として期待される中途採用者の場合には、どのような能力を期待して採用したかがポイントです。つまり、それを基準に労働能力の欠如の有無が判断されることになります。そして、その労働能力の欠如の状況が、解雇されてもやむを得ないと思える程度までの欠如に至っていることが必要となります。
 また、社員にとっても、即戦力として期待されているわけですから、会社の求める能力に自分は至っていないときは退職せざるを得ないことは理解しているはずです。
しかし、よくトラブルになるケースとしては、本人が、「自分はその期待される労働能力に到達している」と誤解しているときです。
したがって、中途採用者の能力が会社の求める能力以下であった場合は、その労働能力の欠如に対して、「注意」や「指導」、「警告」を事前に当該労働者に伝えたかが重要となります。いうまでもなく、勤怠不良の社員と同様、その労働能力が低いことで、会社の業務にどのような支障が生じたかも問われます。

 能力が低い・・・つまり当該労働者の労働能力欠如の主張、立証責任は、会社にあります。
多くのケースでは、会社側が、当該労働者の労働能力欠如を示す具体的かつ決定的なエピソードを複数、証明することで能力が低かったことを立証していくことになります。
 しかし、労働者も黙っているわけではありません。会社が主張、立証する事実に対し、労働者のミスではないこと、あるいはミスしても軽微であって労働能力欠如と結びつくものではないことを主張してきます。
また、ミスがあっても、その指示をした上司の指示にミスがあったこと、あるいは手伝った部下の資料作成ミスに原因があった等、多種多様な反論や弁明が繰り返されます。

 このような事態に陥らないために、詳細な注意書や指導書などが残っていると、会社側はかなり有利になります。
なぜなら、当該労働者の職務遂行の過程の中から生まれた客観的証拠だからです。したがって、その注意書や指導書に、適切な事項を注意・指導していれば、当該労働者には、その注意・指導を受けていた労働能力が不足していたとの心証がとりやすくなります。

もし、その時点で、それが事実と反するなら、当該労働者は反論しているはずです。そのような反論の証拠が提出されない限り、注意書や指導書の内容は事実だったという推測が成立します。

 また、労働能力向上のために、教育プランを実施した事実があれば、これも労働能力欠如の立証するための証拠となります。

協調性がない場合、解雇できますか?

 協調性がない場合の解雇は、平社員と管理職という側面も合わせて考慮する必要があります。
当該労働者が重要な役職に就いているにもかかわらず、協調性を乱すような行為をたびたび繰り返すときは、解雇もやむを得ないということになるでしょう。
 通常、勤怠不良、労働能力の欠如と同様に、この協調性欠如による解雇も、解雇された労働者側からアクションが起きます。それに対して、会社がいかに防衛を図るかといった構図です。

この際も、やはり、「証拠」と「注意」は絶対に必要です。

証拠がない限り、立証は困難です。

したがって、協調性を欠く労働者に対しては、そのような協調性を欠く勤務態度をとり続けると、解雇になりますよという、イエローカードを文書にて発しておくことです。(一回では根拠が薄くなります)

 つまり、注意書や警告書が発せられた経緯(労働者の協調性欠如を示す事実)によって注意書を出して注意をします。そして、注意書によってどう改善されたか(改善されていない事実を示す)を立証します。

さらに、改善されていないことにより、警告書を発し、それでも改善されないことにより、解雇に至ったという時系列的ストーリーが、立証には不可欠となりますので、どの態様の解雇の際も「証拠」と「注意」は絶対に
必要となりますので、そのことを認識されたうえで、無用な労使トラブルを回避して下さい。

仕事以外の問題行動で解雇できますか?

 仕事以外、つまり私生活の非行や問題行動をもって解雇できるかについては、やはりその非行や起こした問題行動の程度によるものと思われます。
たとえば、会社の、社会における名誉等を著しく傷つけた場合、あるいは、私生活上の行為であっても、社員としての適格性が欠如していると評価できる場合に限定されます。

なぜなら、私生活は労働者の自由であり、会社の一方的な支配を受けるものではないからです。(富士重工業事件 最高裁小法廷昭52.12.13)

 上記判決では、使用者の行う企業秩序違反事件の調査と労働者の協力義務に触れ、労働者は、使用者の行う他の労働者の企業秩序違反事件の調査について、これに協力することがその職責に照らし職務内容となっていると認められる場合でないか、又は調査対象である違反行為の性質・内容等違反行為見聞の機会と職務執行との関連性、より適切な調査方法の有無等諸般の事情から総合的に判断して、当該調査に協力することが労務提供義務を履行するうえで必要かつ合理的であると認められる場合でない限り、協力義務を負わないとしています。

 したがって、仕事以外で非行行為に及んだり、問題行動を起こした場合、あくまで、仕事以外の時間に発生したことなので、次のように判断することが必要です。
「仕事以外の問題行動」の具体的内容によって、当該会社の名誉をどれだけ傷つけたか、または当該社員の適格性がどれだけ欠如したことになるかです。その際、当該社員の会社における職位、職責に照らして判断することになります。

そのような観点から、仕事以外の問題行動が、解雇してもやむを得ない程度まで達しているかによって、解雇の正当性が判断されます。

整理解雇したいのですが、法に抵触しないためにどんな事に気をつけるべきですか?

 整理解雇を合法的に行うためには、普通解雇や懲戒解雇とは異なり、4つの要件に留意する必要があります。

 整理解雇の4要件とは次のようなもので、これを検討して解雇権濫用の有無を判断することになります。

1.人員整理(削減)の必要性があること

2.解雇回避の努力をしたかどうか

3.被解雇者の選定に合理性があること

4.整理解雇手続が妥当であること  

 職種限定でなければ、
1の「人員整理の必要性」は、赤字であって人員削減しないと会社の経営に影響が生じることが論点になります。
2の「解雇回避努力義務」については、配転や希望退職の募集によって、いかに解雇を回避する策を講じたかが論点となります。
3の「被解雇者選定に合理性があるか」は、会社全体から解雇対象者を選択するので、ある一定の年齢層を狙い撃ちしていないかなど客観的合理的基準の設定と公正な運用が図られたかどうかが論点となります。
4の「整理解雇手続は妥当か」については、いかに被解雇者に説明したか、また質問に対しても誠意をもって答えたかが論点となります。

 

 職種限定であった場合は、
1の「人員整理(削減)の必要性があること」、及び3の「被解雇者の選定に合理性があること」は必然的にその条件を充足します。
4の「整理解雇手続は妥当か」については、やはり、いかに被解雇者に説明したか、質問に対して誠意をもって答えたかがポイントになります。

2の「解雇回避努力義務」については、その方法と程度が問題になります。

 職種限定がない場合も職種限定がある場合も、上記の策を講じたことを裏付ける証拠や資料があることが絶対条件になるのは、普通解雇や懲戒解雇と同じです。

失踪した社員を解雇できますか?

 失踪した者に対する解雇を有効に成立させるためには、会社からの解雇の意思表示が相手方(以下、社員)へ到達することが必要となります。民法では以下のように定められています。

民法第97条(隔地者に対する意思表示)

1. 隔地者に対する意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる。


 社員に「到達」したといえるためには、その解雇の意思表示または書面が社員方のいわゆる支配圏内に置かれることをいいます(最高裁判決昭和43年12月17日)。
 しかも、その「到達」は必ずしも社員がその通知を受領して、会社からの解雇の意思表示を認識したことまでは求められていません。
 しかし、社員が失踪している場合、自宅に郵送しても、また妻がその通知を受領しても、その支配圏内に置かれたとは認められないことから、「到達」したとは認められません。
 失踪した社員に、この意思表示をすることは大変困難であるため、民法第98条の公示送達という方法により、社員の最後の住所地を管轄する簡易裁判所に申し立てをし、裁判所の掲示板に掲示するほか、官報や新聞に少なくとも1回掲載するなどの方法により、社員へ解雇の意思表示を行わなければなりません。これを経れば、最後の掲載から2週間を経過したときに解雇の意思表示が当該社員に到達したものとみなされます。

 しかし公示送達の方法は、手続きが面倒なため、実務上は用いられることは稀です。。社員の入退社が激しい会社では、私生活での金銭トラブル等の理由により正式な退職手続きをとらずに突然出社してこなくなってしまう社員は少なくありません。
したがって、社員が行方不明になったときの対処方法としては、面倒な公示送達の方法をとらずに、会社として解雇の意思表示をしなくてもいいように、就業規則で別途定めておくことをお勧めします。
 具体的には、就業規則における退職事由の項目に「従業員が、無断欠勤をし、会社からの連絡がつかない状態(行方不明状態)が要勤務日14日を経過した場合に、会社は、従業員が雇用契約を履行し労務を提供する意思がないと判断し、その翌日の終業時刻を持って自然退職とする。」と追加しておけば、会社からの解雇の意思表示や本人の意思表示がなくとも退職が有効に成立すると考えられます。
なお、雇用保険の喪失手続きにおいても「自己都合退職」としても処理することができます。
 労働契約を解消することを目的とするのであれば、解雇に拘る必要はありませんし、上記のように就業規則を整備することで対処することが可能です。ここにも就業規則の重要性が見え隠れしているのです。

解雇予告手当を支払わなくてもよい場合とはどんなケースですか?

 

 原則として、懲戒解雇の場合も、解雇予告手当を支払う必要があります。懲戒解雇の場合(即時解雇)は予告手当を支払わなくてもよいと誤解するケースが大変多いのが現状ではないでしょうか?
 しかし、懲戒解雇事案で会社を辞めさせるのに、解雇予告手当を支払いたくないという会社の気持ちは私も同じ経営者として痛いほどわかります。
 まず、そんな場合には、労働基準監督署に解雇予告除外認定を申請しましょう。
従業員が次のような行為をした場合は、解雇予告除外認定を受けることができる可能性は高いと考えられます。

1.事業場内における窃盗、横領、傷害等の刑法犯に該当する行為あるいは事業場外の同様の行為で著しく事業場の名誉・信用を失墜させる行為など

2.賭博、風紀紊乱により職場規律を乱し、他の従業員に悪影響を及ぼす行為など

3.重大な経歴の詐称

4.他の事業場への転職

5.2週間以上正当な理由なく無断欠勤し、出勤の督促に応じない場合

6.出勤不良で数回注意しても改まらない場合

 解雇する理由には、会社の経営難による場合や、従業員の勤務態度や能力・適性による場合など多種多様ですが、後日の労務トラブル回避の観点から、単純にいきなり解雇を通告するようなことはせず、まずは解雇を回避する策を検討すべきでしょう。

 例えば、解雇しようとする理由が会社経営上の問題であれば、配置転換や労働条件の変更などを従業員に説明した上でよく話し合うことが重要です。
 また、従業員の勤務態度や能力等の問題であれば、教育訓練などによる矯正・改善の見込みがない場合に初めて、その従業員の解雇について考えるべきです。その場合でも、少なくとも十分に事情を説明することが必要ですし、本人が納得し、合意の上で労働契約を解約(合意解約)という形で雇用関係を終了できれば、会社にとってのリスクは限りなく少なくなります。

問題社員を解雇したいのですが

 問題社員、つまり、会社にとって不適格と思われる社員を解雇する場合には、次のことをよく考えてから策を講じて下さい。 
 使用者は、元来、解雇権を有しています。
ただ、制限される場合があります。
どんな場合かというと、「客観的な理由を欠いている」、「社会通念上相当であると認められない場合」です。
上記の2つの要件のうち、一つでも充足しないと、解雇は無効になります。
解雇が難しいとされる所以は、上記のことによるものなのです。
 

 では、「客観的な理由を欠いている」とは一体、どういうことを指すのかが問題となります。
これは、解雇に値する事由に該当する事実があるかどうかです。その要件事実が合理的な理由であれば、「社会通念上相当であると認められる場合」の要件を満たす限り、解雇は合法です。
客観的に合理的な理由としては、次のようなことが挙げられます。
1.労働能力、技術、知識の著しい欠如
2.労務提供ができない、または困難
3.労務の著しい不適格(協調性欠如、業務上の不適格等)
4.信頼性の著しい欠如(職務怠慢、業務阻害、善管注意義務違反、重大な損害を与えたこと)
5.重大な規律、秩序違反
6.業務命令違反、職務遂行違反、守秘義務違反
7.会社または従業員への著しい名誉、信用失墜行為
8.刑事事件、セクハラ行為
9.人員整理・合理化による職種または業務の消滅、減少
10.その他雇用を継続しがたいやむを得ない事由

 客観的合理的な理由があった場合は、もう一つの要件である「社会通念上相当であると認められない場合」も検討しなければなりません。
具体的には、使用者側の対応措置が、以下の場合は、社会通念上相当と認められない場合に該当することになります。
1.使用者が、従業員の行った違法に関して、注意・指導・監督を行ったかどうか、または黙認していなかったか
2.適正な指示や命令の欠如
3.配転等による改善努力を果たしたか
4.当該行為と解雇処分のバランスの欠如
5.整理解雇4原則の不遵守
6.違法、不当な目的、動機があったか

 上記のように、解雇を有効とするためには、「客観的に合理的な理由がある」かつ「社会通念上相当と認められる」・・・この2つの要件を満たすことが、解雇権濫用法理の世界で確立されています。

上記のことを踏まえ、解雇手続に踏み切っていいものかどうかを判断して下さい。

 ちなみに、他の従業員に対し、暴行等により生産意欲を阻害する行為に対して懲戒解雇を有効としたケースもあります。(極東交通事件 昭59.6.4 大阪地裁決定)

参考までに、労働契約法の解雇に関する条文は次のとおりになっています。

労働契約法
第16条「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」

有期契約のパートタイマーや契約従業員を契約期間終了前に契約を解除できますか?

                             
 原則として、やむを得ない事由がない限り、有期雇用契約のパートタイマーや契約従業員は、その契約期間が到来するまでは解雇はできません。
契約期間の満了をもって、雇い止めをするのが最善の対策です。
雇い止めとは、契約期間満了時に次の更新をしないことを言います。

 有期雇用契約のパートタイマーや契約従業員を契約期間中に解雇する場合には、その理由や合理性については、通常の解雇のケースよりも、さらに厳密に「合理性」や「社会通念上の相当な理由」を要求されることになります。
 たんに「受注が低下している」という理由だけでは、冒頭の「やむを得ない事由」とは認められにくいので、解雇するのは難しいものと思われます。
 パートタイマーだから・・・契約従業員だから・・・と安易な感覚で、契約期間途中で解雇しますと、思わぬトラブルに発展する可能性があります。
 最善な策は、契約期間満了にて、退職していただくことです。
そのためにも、会社は、有期契約労働者に対して、契約の締結時にその契約の更新の有無を明示しておくことです。たとえば、「更新する場合があり得る」、「契約の更新はしない」などです。

また、会社が、有期労働契約を更新する場合があると明示したときは、当該労働者に対して、契約を更新する場合、更新しない場合の判断基準を明示しなければなりません。

判断基準としては、以下のような事項が挙げられます。
1.契約期間満了時の業務量によって判断する

2.労働者の勤務成績、態度により判断する

3.労働者の能力により判断する

4.会社の経営状況により判断する

 いずれにしても、要らぬ労務トラブルに巻き込まれないためにも、会社から労働者に対して書面により明示しておくことが重要です。

経歴詐称した従業員を解雇できますか?

 すべての経歴詐称が懲戒処分の対象となるわけではなく、真実を告知したならば採用しなかったであろう重大な経歴詐称に当たる場合に懲戒解雇が有効とされることが多くなっています。
 そもそも、労働者は、労働契約締結に際し、使用者が経歴の申告を求めた場合、原則としてこれに応ずべき義務を負います。 ですから、会社は、履歴書や職務経歴書を提出させているのです。
また、履歴書の賞罰欄にいう「罰」とは、一般に確定した有罪判決(いわゆる「前科」)を意味します。
経歴詐称に対する懲戒解雇有効の是非の判断は、「真実を告知していたならば採用しなかったであろう重大な経歴の詐称であったかどうか」が基準となります。
学歴や職歴の詐称において、会社側に労働力の適正な配置を誤らせるような場合には、懲戒解雇が有効となります。

経歴詐称の事件で最も問題になるのが、学歴・職歴・犯罪歴です。
 まず、学歴詐称です。
【学歴詐称に基づく解雇が有効となったケース】
 学歴に関しては、労働力の適正な配置を誤らせる等の理由がある場合には、これに基づく解雇を有効とする裁判例が多く見られます。
たとえば、次のような場合は、いずれも秘匿に基づく解雇または懲戒解雇を有効としています。
1.会社の職位が学歴別に設定されている場合(三菱金属鉱業事件 東京地決昭46.11.25 )
2.高卒・中卒のみを採用する人事労務管理体制を一貫している場合(硬化クローム工業事件 東京地判昭60.5.24)
3.特定の学歴を重視している場合(相銀住宅ローン事件 東京地裁昭60.10.7 )
4.学歴が適格性判断の上で重大な要素の場合(正興産業事件 浦和地裁川越支 平6.11.10 )
 
 その一方で、学歴詐称による解雇が無効になる場合もあります。
【学歴詐称に基づく解雇が無効となったケース】
1.学歴の詐称により経営の秩序が乱されたとはいえない(西日本アルミニウム工業事件 福岡高裁判昭55.1.17 )
2.学歴・職歴が労働力の適正評価に何ら影響がない場合(マルヤタクシー事件 仙台地裁判60.9.19 )
3.税理士の資格および中央大学商学部卒を詐称したことが、業務遂行に重大な支障を与えたことにはならない(中部共石油送事件 名古屋地裁平5.5.20)がある。

 次に職歴詐称です。
【職歴詐称に基づく解雇・懲戒が有効とされたケース】
1.経験者を雇用しない方針のタクシー会社が採用面接の際にその旨を伝えていたにもかかわらず、以前別のタクシー会社に勤務し懲戒解雇されたことを秘匿していたタクシー運転手に対する懲戒解雇が争われ、単に労働契約時の信義則違反にとどまらず、入社後においても労使間の信頼関係を損ない、企業秩序を乱すものとして、懲戒解雇が有効と判断された。弁天交通事件(名古屋高判昭51.12.23)
2.乗車券不正使用、自家用車の飲酒運転等を理由に解雇された職歴を秘匿して採用され、これを理由とする譴責処分は有効(立川バス事件東京地八王子支判平元.3.17)
3.経験者であるとの虚偽の申告をしたことを理由とする解雇は有効(環境サービス事件 東京地判平6.3.30)

 最後に犯罪歴です。
犯罪歴に関して、大森精工機事件(東京地判昭60.1.30)では、起訴され裁判の最中であることは「罰」には含まれないとされました。また、他の裁判例では、履歴書の賞罰欄に起訴猶予事案等の犯罪歴(いわゆる「前歴」)まで記載すべき義務はないとされています。さらに西日本警備保障事件(福岡地判昭49.8.15)では、少年時代の非行に関する申告義務はないとされています。

パートを契約期間の途中で解雇。残存期間の賃金を負担しなければいけないのですか?

  パートと労働契約を締結する際には、通常「○月○日から○月○日まで(あるいは○ヶ月間)を契約期間」とするようなことを定めています。
その際は、使用者はやむを得ない事由がなければ契約期間の途中で会社都合により解雇することはできません(労働契約法17条1項、民法628条)。
 また、やむを得ない事由によって使用者が解雇することが認められる場合であっても、その理由が使用者側の過失で生じたものであるときは、従業員に対してその損害を賠償する責任があります。
もし、1年契約という約束で採用したのであれば、当然、その期間中は雇用する義務があります。それを会社側の都合で、従業員の過失がないのに9カ月で解雇する場合、会社側には、解雇によって生じた損害を賠償すべき義務が生じることがあります。
 この場合の賠償額は、実際の損害額、つまり解雇がなければ得られたであろう残存期間分の賃金がこれに相当するものと考えられます。しかしながら、実務上は、従業員との話し合いによって、残存期間に応じてその間の賃金相当額の一部を支払うことを合意するケースが多いようです。
 解雇による逸失利益を算定する場合、解雇により失われた賃金から、別会社で働いて得られた収入を「中間収入控除」として減額すべきとの立場が一般的です。
 次に、「やむを得ない事由」とは何を指すのかということです。
期間途中の解雇が「やむを得ない事由」によるものかどうかは、個別事案によって具体的な事情を総合的に勘案して判断せざるを得ません。
しかし、少なくとも、契約で定めた期間中の雇用が保障されていることが前提とされる労働契約を途中で打ち切ることになるわけですから、期間の定めのない労働契約の場合の解雇の合理性・社会的相当性の判断以上に厳格に判断されます。
 この点について、裁判例でも、「やむを得ない事由」について一般的な意義を示したものはありません。
しかし、こんな例があります。会社の業績悪化によりパートタイマーを期間途中で解雇した事案について、契約期間の終了を待つことなく解雇しなければならないほどの予想外かつやむを得ない事態が発生したと認められず、解雇は無効「安川電機八幡工場(パート解雇)事件」平14.9.18福岡高裁決定)。
 また、有期労働契約の契約期間中において、いつでも30日前の書面による予告の上、本件契約を終了することができる旨の記載をした労働契約書により契約を締結した者に対する契約期間中の解雇について、解雇の理由がやむを得ない事由に当たるとは認められないとしたものがあります(「モーブッサン・ジャパン事件」平15.4.28東京地裁判決)。
この事案では、会社側が、その従業員が業務上作成した資料に多数の記載ミスがあったことや通話料金を一部会社に不正請求していたことなどを指摘しましたが、裁判所は、これらの事情が解雇を根拠付けるやむを得ない事由には当たらないと判断しています。

普通解雇と懲戒解雇 解雇手続き上、どのような点に留意すべきですか

  解雇とは、使用者が労働契約を一方的に解約することをいいます。
このうち、従業員の企業秩序違反行為、企業の社会的信用の失墜などを理由として制裁する場合の解雇が懲戒解雇です。それ以外の解雇が普通解雇といわれています。
懲戒解雇や普通解雇のほかに、整理解雇があります。整理解雇は、不況等による人員整理のために行うものです。
 懲戒解雇された場合の従業員の不利益は、即時解雇されたり、退職金が減額されたり、不支給となる場合があるため、従業員にとっては、普通解雇に比べ、不利益が非常に大きいものになります。
一般的に、解雇が有効と認められる要件については、普通解雇、懲戒解雇いずれの場合でも、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と認められる場合でなければ、解雇権の濫用として無効となります(労働契約法16条)。
 懲戒解雇の場合は、普通解雇の場合と比べて、これらの懲戒処分の有効性の判断は、特に従業員が大きな不利益を負うことになるため、下記のように、より厳しく判断されます。
1.就業規則上の懲戒解雇事由に該当すること
 ※懲戒解雇の場合は、就業規則の懲戒解雇事由に当たらない事由によって懲戒解雇することはできない(限定列挙)とされています。それは、懲戒解雇が、企業秩序に対する従業員の著しい不良行為、非行、信義則違反等を戒めることを目的とする懲戒処分のうち、企業の外に放逐するという最も重い処分として行われるものであるため、解雇事由はあらかじめ就業規則に定めておく必要があるとされています。
2.従業員の行為と懲戒解雇として処分することとのバランスがとれていること(相当性)
 ※従業員の非違行為の程度やその他の事情に照らして、懲戒解雇という重い処分を行うことが本当に必要なのか、妥当な処分なのかが判断のポイントとなります。
3.適正手続の保障など罪刑法定主義に準じた措置の有無
 ※使用者が従業員を懲戒処分するにあたり、不遡及の原則(後から定められた就業規則の懲戒事由によって処分しないこと)、一事不再理の原則(過去にすでに処分を受けている行為について重ねて処分しないこと)、適正手続の原則(本人に弁明の機会を与えること)などに適っているか否かという点から判断されています。
 会社としては、以上を踏まえて、懲戒解雇あるいは普通解雇が妥当かどうか検討する必要があります。その結果、それが有効と認められるかどうかは、その処分が有効要件を備えているかどうかにかかっています。
 懲戒解雇事由、普通解雇事由のいずれにも該当し得ると考えられる場合、懲戒解雇を行うのと普通解雇を行うのとでは、どのような効果の違いが生じるのでしょうか。
 まず、労働基準法では、解雇する場合の手続として、30日前の予告または平均賃金30日分以上の解雇予告手当の支払いが必要とされています(労働基準法20条)。
従業員に即時解雇されても仕方がない著しい非違行為があれば、所轄労働基準監督署であらかじめ「解雇予告除外認定」を受けて解雇予告や解雇予告手当を支払うことなしに即時解雇することができます。(懲戒解雇)
 さらに、雇用保険の失業等給付のうち基本手当(いわゆる失業保険)を受けようとすると、普通に解雇された場合であれば、一般に、給付制限を受けることはありません。
しかし、当該社員の責に帰すべき重大な理由があって解雇または懲戒解雇された場合、いわゆる「重責解雇」には、自己都合退職した場合と同様に給付制限を受けることとなります。つまり、解雇とはいえ、待期期間経過後最長3ヶ月経過しないと失業等給付は支給されないことになります。
 懲戒解雇事由に該当するのであれば、懲戒解雇によることも、普通解雇によることも可能です。
裁判において、懲戒解雇の有効性が争われた場合に、懲戒解雇が認められなかったからといって、懲戒解雇を途中から普通解雇の通告に切り換えることは、懲戒解雇と普通解雇とでは根拠や要件、効果が異なること、また、相手方従業員の地位が不安定になることから、認められないとされるのが一般的です。
 当該問題社員の将来を考慮して、実務上は、本来懲戒解雇の対象となるものを、情状酌量の結果、普通解雇にとどめることも十分あり得ることです。